【はじめに】
人体は免疫反応により異物の除去を行うことで、病気から身を守っています。この時、免疫系により抗体が産生され抗原となる物質に作用します。健常人の場合は、抗体により抗原を弱毒化して生体の防御が行われるのですが、抗体により正常な細胞・組織を攻撃してしまうことがあります。このような病態を自己免疫疾患といいます。
自己免疫疾患は根本的な治療がないため、症状の緩和や改善を図る治療となります。治療法としては、食事療法や薬剤によるものなど様々な方法がありますが、特に症状の重い場合は血液浄化療法により、血液から症状の原因物質を除去する治療が行われます。その治療法の1つが免疫吸着療法となります。
【適応疾患】
免疫吸着療法の適応疾患を下記に示します。
① 悪性関節リウマチ
② 全身性エリテマトーデス
③ 重症筋無力症
④ ギランバレー症候群
⑤ 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎
⑥ 多発性硬化症
上記で述べた疾患において免疫吸着が施行されますが、疾患で使用するカラムが異なるので、注意が必要となります。
【治療原理】
① イムソーバPH
イムソーバPHは、リガンドにフェニルアラニンを使用しています。フェニルアラニンは疎水性であるため、疎水性の物質を疎水結合により吸着することができます。疎水性の物質としては、リウマチ因子や抗DNA抗体などがあげられます。
イムソーバPHの適応としては、悪性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、多発性硬化症があります。
② イムソーバTR
イムソーバTRは、リガンドにトリプトファンを使用しています。吸着原理は疎水結合であり、抗アセチルコリンレセプタ抗体、抗ガングリオシド抗体の吸着に適しています。
イムソーバTRの適応としては、重症筋無力症、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、多発性硬化症があります。
③ セレソーブ
セレソーブはリガンドにデキストラン硫酸を用いており、静電気的相互作用により陽性荷電物質を吸着します。LDL吸着と同じ原理であるが、担体である多孔質セルロースビーズの径を小さくすることにより、抗DNA抗体を選択的に吸着できるようになっています。
セレソーブの適応としては、全身性エリテマトーデスがあります。
【注意点】
セレソーブの場合はLDL吸着と同様で、ブラジキニン産生による血圧低下に注意が必要となります。また、カラムにより吸着対象が異なってくるため、カラムの選択が適正に行われているかなども確認する必要があります。
【さいごに】
免疫吸着は他の血漿吸着療法に比べ、適応疾患が多いためそれぞれの病態を把握しなければなりません。またカラムの種類も複数あるため、間違った使用を防ぐためにカラムの管理方法も考慮しなければなりません。