透析装置にBV計(ブラット・ボリューム計)がついている機器があると思います。BV計とは名前のとおり、患者さんの循環血液量を測定するセンサーになります。循環血液量を測定することにより、血圧低下を事前に測定することができます。その測定原理とヒトの水分移動について書きます。
BV計の原理は、「光の反射」を利用し「血液の濃度」を測定しています。血液の濃度といっても、正確な濃度は測定不可能です。測定できるのは、相対変化な血液の濃度です。
血液の濃度とは、ヘマトクリット値(血球成分量/血液量)と同等の考え方で大丈夫です。
血液の赤色は、赤血球の由来の色です。ヘマトクリット値が上がると、血液の色も変化します。色が濃ゆくなれば、光の反射率は増え、色が薄くなれば、光の反射率は減少します。この原理を使い血液濃度を経時的に測定することにより、体内の血液量を把握することができます。
例えば、4時間透析で除水をした場合の血液濃度の変化について、
極端な変化の例ですが、このような変化が起こることが予想できます。
人体の水分量は、体重の約60%であります。そのうちの水分分布は、40%が細胞内液、12%が組織間液、8%が血液となっています。
透析の除水は、血液の血漿成分のみから除水されます。
単純に考えると、体重60kgでヘマトクリット値が50%の場合、60×0.08×0.5=2.4Lになります。なので最大の除水量が“2.4L”になってしまい、さらに2.4Lの除水後はヘマトクリット値が100%になってしまいます(笑)。
実際は、そんなことはおきません。その理由として、血管内に水分を保とうとする反応が起きるからです。
除水により、血液中の水分が奪われると、細胞内液から細胞間質に、細胞間質から血管内に水分が移動し、血管内の血液量は一定に保たれようとします。
その水分の移動する現象をプラズマ・リフィリングといい、その移動速度をリフィリンググレードといいます。
リフィリンググレードは、人によって違います。要因として、細胞膜の透過性や血液内の膠質浸透圧などの影響を受けます。
除水時の血圧低下は、循環血量の減少(70%に低下)によるものです。なので、血液量とリフィリンググレードによって、血圧低下の無い除水速度の上限が予想できます。
BV計は脱血側と送血側に設置されていることもあります。除水時には脱血側より送血側が、濃度が高いことが考えられます。
脱血側では、体内の血液の濃度なので、経時的に脱血側を測定すると、循環血液量の減少率が分かります。(送血側でも測定は可能)
さらにダイアライザから一定量の補液をすることにより、シャントの再循環率も測定できます。
測定方法や計算方法は、メーカによって違うと思いますが、基本的な原理は同じになっていると思います。このように除水について、いろんな角度から見ることはとても面白いですね。