深部静脈血栓予防装置は、文字どおり「深部静脈血栓(DVT)を予防する医療機器」の事です。私の勤めている病院の深部静脈血栓予防装置は、「SCD」と「フロートロン」です。いわゆるフットポンプ言われているものであり、多くの病院では、ポンプ系の医療機器の次に、台数が多い医療機器ではないでしょうか?
そもそも深部静脈血栓症とは、太ももや膝の中心を走る深部静脈に血栓が出来ることです。その血栓が、静脈から心臓や肺に流され、肺の血管で詰まる場合があり、それ肺塞栓症といいます。その肺塞栓症を引き起こすリスクがあります。
「深部静脈血栓症」と「肺塞栓症」は連続した病気なので、合わせて「静脈血栓塞栓症」と呼ばれています。
▶原因
①長時間同じ姿勢(血液の流れの問題)
②血液凝固の亢進(血液の性質の問題)
静脈の流れは、歩行や手足の運動にともなう筋肉の収縮に助けられています。なので①は、エコノミークラス症候群といわれるように、同じ姿勢で長時間いると、下肢の筋肉ポンプが働かなくなり、静脈の流れが悪くなり、血栓ができやすくなります。
②は、外傷や妊娠、血液が凝固しやすい病気、経口避妊薬(ピル)服用などにより、血液は凝固しやすくなり、血栓ができやすくなります
となると、手術後の患者さんは、①と②の原因が同時かぶることになるので、病院での予防は必要性が高いと言えます。
■肺血栓塞栓症予防の診療報酬■
注1病院(療養病棟を除く。)又は診療所(療養病床に係わるものを除く。)に入院中の患者であって肺血栓塞栓症を発症する危険性が高いもの(結核病棟に入院中の患者においては手術を伴うもの、精神病棟に入院中の患者においては治療上必要があって身体拘束が行われているものに限る。)に対して、肺血栓塞栓症の予防を目的として、必要な機器又は材料を用いて計画的な医学管理を行った場合に、当該入院中1回に限り算定する。
注2肺血栓塞栓症の予防を目的として行った処置に用いた機器及び材料の費用は、所定点数に含まれるものとする。
予防方法は⇒「静脈還流を促すために下肢静脈を適度に圧迫する」
その圧迫方法は2つあります。
①弾性ストッキング
②間欠的空気圧迫法(フットポンプ)
弾性ストッキングは弾力性をもった特殊なストッキングです。これを着用すると、下肢を締め付けて静脈還流を良くします。
間欠的空気圧迫法も弾性ストッキングと同様で、下肢を締め付けて静脈還流を良くします。間欠的空気圧迫法を施行する医療機器がフットポンプのことです。
下肢に、空気で膨らむシートを巻き、タイミングよく下肢を圧迫することにより、
静脈還流を促し、血栓の生成を防ぎます。本来はその圧迫を下肢の筋肉が行います。
空気で膨らむシートとは、簡単にいうと間欠型血圧測定に使用するカフの大きいバージョンです。
※注意点として
フットポンプは深部静脈血栓を予防する装置なので、深部静脈血栓がある場合は、禁忌です!!!
加圧により血栓の遊離と血流亢進により、肺塞栓症を引き起こす危険性が高まるためです。
下肢静脈瘤の場合も静脈のうっ滞が起きやすい状態なので、血栓ができないようにフットポンプを使用は必要です。
ただ空気で下肢を加圧するシンプルな機器ですが、患者さんにとっては大きなリスクを回避するのに必要な医療機器です。機器によっては、足首→ふくらはぎ→太ももの順にタイミングよく加圧する性能のいいフットポンプもありますので、動作点検の際に、実際に自分に使用するのもいい経験になると思います。