現在ダイアライザの構造の種類は、中空糸型と積層型があり、シェア率としては、中空糸型が98.5%、積層型が1.5%になっています。中空糸型の構造がほとんどをシェアしています。
積層型は平板型やプレート型、キール型とも呼ばれ、実際に使用した医療者はわかると思いますが、中空糸型とは違う手技があります。
それは、「プライミング時」と「開始時:脱血時」にダイアライザ内の透析液側の圧力を下げる手技が必要になることです。
今回は、なぜそのような手技が必要な理由を記事にしました。
積層型のダイアライザといえば、「H12ヘモダイアライザ」が一番使われているのはないでしょうか?積層型のダイアライザの基本情報を記述します。
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膜素材:PAN膜(アクリルニトリルとメタアリルスルホン酸ナトリウムの共重合体)
(ポリアクリルニトリル共重合体)
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膜材質:ハイドロゲル構造(親水性により)
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膜構造:対称膜(全体が緻密層)
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膜電荷:強い陰性荷電(-70mVぐらい)⇒ ACE阻害薬は使用禁忌
PS膜は―5mVぐらい
積層型と中空糸型の構造の違いです。
膜は黄色で表現してます。
中空糸型は膜がストロー状をしていて、内部に血液が流れ、外部に透析液が流れる「内部灌流型」です。
積層型は、血液側と透析液側と支持材の層構造(ミルフィーユ)になっていて、血液側層に透析膜が挟み込み、その膜の反対側に透析液側流れている構造です。流れ方は、中空糸と同じで、向流(血液と透析液が逆向きに流れている)になっています。
構造が違うのは一目瞭然だと思いますが、この違いどのように影響するかというと、血液側層にコンプライアンスがあることです。
コンプライアンスがあるということは、血液側圧力と透析液側圧力のバランスにより、血液側充填量が変化します。
血液側容量を確保されるためには、常に、血液側圧力>透析液側圧力になる必要があります。なので逆濾過はほとんど起きないです。
実際の内部での圧力分布は、流入口と流出口の場所で変わるので、
この図のようになることが考えられます。
プライミング時には、透析液側を開放する必要があり、膜に過度な圧力避けるためや、膜全体に洗浄を行うために必要なのが考えられます。
透析開始時には、血液充填量を多く確保するために、透析液側の圧力を大気開放にする必要あります。
「プライミングの時に充填量確保されているではないか」と思う方もいると思いますが、プライミングと開始時の間にガスパージの工程があるため、そこで、透析液側の圧力が変化していることが考えられます。
手技の違いを作業的に覚えるのではなく、構造を理解することにより、意味を理解して手技を行うと、とても面白いです。
適応患者やPAN膜、ハイドロゲル構造、吸着能の話は、また別の記事で記載します。