駆け出しCEのblog

臨床工学技士として日々勉強しております。 このブログでは、自身の知識や学んだことを他のコメディカルとも共有したいと思い作成しています。

関東でMEとして働いています。
臨床工学や医療機器について学んだことを
MEの目線から書いていきます。
看護師さんや他のコメディカルでもわかるように
書きますのでみんなで知識を共有していきましょう。

【はじめに】

HeartMateは植込型補助人工心臓の1つであり、現在使用されている植込型補助人工心臓の主流となっています。

補助人工心臓の運用ついては限られた施設でしか行われておらず、臨床の現場でも関わる機会も少ないですが、知識として知っておくことには意義があると思います。

今回は、埋込型補助人工心臓の中でもHeartMateについて、私が調べたことを簡単にまとめていきたいと思います。

 

HeartMateとは】

脱血管、送血管、血液ポンプ、経皮ドライブライン、システムコントローラ、電源ケーブル、パワーモジュール、ディスプレイモジュールにて構成されています。植込型補助人工心臓と言っても、脱血管、送血管、血液ポンプだけが体内にあり、経皮ドライブラインを介してその他の部品と接続されております。

血液ポンプは軸流ポンプが使用されており、ローターが高速回転することにより生じる揚力により血液を循環させています。脱血部位は心尖部から行い、上行大動脈へ送血を行っております。血液ポンプ自体は、腹膜と腹直筋の間に留置されます。

血液ポンプへの電源供給は、体外にあるパワーモジュールより行います。また、バッテリーを用いる事も可能であり、バッテリーはリチウムイオンを使用しています。

 

【血液ポンプの流量特性】

補助人工心臓を用いている場合、最も注意しなければならないのはポンプ流量が適切であるかどうかです。ポンプ流量は、前負荷、後負荷、残存心機能により左右されます。特に、後負荷が高くなるとポンプ流量が低下してしまうため、後負荷の要因となるパラメータに関しては、適切なコントロールが必要になります。

後負荷の要因としては、血圧が挙げられます。同じ回転数では、血圧が高くなるにつれてポンプ流量が低下してしまいます。

 

【抗凝固療法】

患者さんは経口でのワーファリン投与が必用となります。そのため、消化管出血などには注意が必要となります。

 

【感染】

手術痕の感染はもちろんですが、HeartMateⅡの場合、体内の血液ポンプと体外のシステムコントローラを経皮ドライブラインにてつながっているため、経皮ドライブラインが体外へと露出する部分の感染が起きやすくなっています。そのため、定期的な消毒、ガーゼの交換やシャワー浴などにより傷口を清潔に保つ必要があります。

 

【患者教育】

HeartMateⅡを使用する場合は、自宅での療養が可能となります。そのため、パワーモジュールからバッテリーの切り替えなどを患者自身で行わなければなりません。また、患者自身だけでなく家族の協力も必要となるため家族同席での教育が必要となります。

【はじめに】

高頻度振動換気(High Friquency Oscillatory Ventilation:HFOV)は、主に新生児領域で使用される人工換気法であります。私の勤める病院でもHFOVを行う症例はありますが、あまり多くないのが現状であります。

今回は、HFOVについて簡単にまとめていきたいと思います。

 

HFOVとは】

HFOVは、死腔量よりも少ない一回換気量を1秒間に10~20回送気するという人工換気法であります。1回の送気ガスは少なくなりますが、総換気量においては通常の人工換気を上回ることになります。少ない一回換気量にて送気を行うことから気道内圧の急激な上昇を防ぐことができます。そのため、新生児の未熟な肺にたいして有効な人工換気療法の1つとなっています。ちなみに一回換気量は、体重1kgあたり12mL程度です。

HFOVは、送気方式の違いにより複数に分類することができます。その中でもピストン式が最も使用されており、私の勤める病院でもピストン式を使用しています。

ピストン式HFOVの送気ガス波形は正弦波(sin)となっています。通常の呼吸器では、吸気を人工呼吸器が制御しますが、HFOVの場合は吸気・呼気両方を人工呼吸器により制御します。

 

【適応疾患】

HFOVは、気道内圧の急激な上昇を防ぐことができるため、肺コンプライアンスの低い症例に対して有効だとされています。新生児の場合だと、肺サーファクタントの産生ができずに生じる急性呼吸窮迫症候群が挙げられます。また、肺内出血を伴う症例に対して有効であったという報告もあります。

逆にHFOVの効果が期待できない症例としては、上気道閉塞のある疾患や粘度の高い気道内分泌物のある疾患などが挙げられます。

 

HFOVの効果】

   急激な気道内圧の上昇を防ぐことができる。

死腔量よりも少ない一回換気量により急激な圧変動がないため。

 

   平均気道内圧の上昇。

高頻度での送気を行うため、PEEP効果が得られるため、平均気道内圧が上昇する。

 

   吸気・呼気ともに制御できる。

ピストンの押し引きにより正弦波状の送気波形が生じるため。

 

【さいごに】

私の実感としては、HFOVを使用する症例は年々減ってきています。その要因としては、人工呼吸器の性能が高くなっており他の換気モードでも気道内圧などのコントロールが可能になっているためだと考えられます。しかし、HFOVを必要とする場合もありますので基本的な理解は必要と言えます。

 

 

【はじめに】

カテーテル検査は大きく右心カテーテル検査、左心カテーテル検査、両心カテーテル検査の3つに分けることができます。

右心カテーテル検査は、右心系の圧測定や心拍出量の測定また酸素飽和度の測定などを行うことができます。そのため、弁膜症や心筋症の診断を行うために行われます。

今回は、右心カテーテル検査について簡単にまとめていきたいと思います。

 

【穿刺部位】

右心カテーテルを行うためには、まず静脈穿刺を行わなければなりません。下記に主な穿刺部位を示します。

   内頸静脈

   鎖骨下静脈

   尺側皮静脈

   大腿静脈

私の勤める病院では、主に内頸静脈に穿刺を行って検査を行います。また、穿刺はエコー下にて行われることが多く、エコーの準備やセッティングも臨床工学技士が行っております。

 

【検査の流れ】

   右房圧(right arterial pressure : RAP)の測定

   右室圧(right ventricular pressure : RVP)の測定

   右心室拡張末期圧(right ventricular end diastolic pressure : RVEDP)の測定

   肺動脈圧(pulmonary arterial pressure : PAP)の測定

   肺動脈楔入圧(pulmonary capillary wedge pressure : PCWP)の測定

   心拍出量(cardiac output : CO)の測定

   肺動脈から右心室までの引き抜き圧測定

圧波形の測定時には、患者さんに息止めをしてもらうことでより正確な測定を行うことができます。

 

【診断可能な病期】

右心カテーテル検査により、診断可能な病期を下記に示します。

   三尖弁狭窄症

   三尖弁閉鎖不全症

   肺高血圧症

   右心不全

   僧帽弁狭窄症

   僧帽弁閉鎖不全症

など・・・

 

【臨床工学技士の業務】

私の勤める病院では、右心カテーテル検査時における臨床工学技士の役割として、各波形の記録などのポリグラフ操作、心電図や動脈血酸素飽和度などの監視を主に行っています。

また、術中に生じる機器の不具合などにも臨床工学技士が対応しなければなりません。

【はじめに】

酸素解離曲線は、患者さんの呼吸管理を行う上でおさえておかなければならない知識の1つです。私自身も学生時代に何となく暗記していましたが、臨床の現場で人工呼吸器や補助循環、人工心肺などの業務に関わるうちに、しっかりとした理解が必要だと感じました。

本日は、酸素解離曲線を理解するために必要最低限の知識をまとめていきたいと思います。

 

【酸素解離曲線とは】

酸素解離曲線とは縦軸に動脈血酸素飽和度、横軸に動脈血酸素分圧をとり、動脈血酸素飽和度と動脈血酸素分圧の関係を示したS字状のグラフになります。どのようなグラフか気になる方は、Googleで検索してみてください。

ヘモグロビン1つに酸素は4つ結合するが、酸素と結合していない状態及び4つの酸素と結合している状態が安定状態となります。そのため、ヘモグロビンに酸素が1つ結合すると、2つ目3つ目と次々に酸素とヘモグロビンが結合していきます。つまり、最初の1つが結合するまでが困難であり、最初の1つが結合してしまえば、4つまで酸素が次々と結合するのであります。そのため、酸素解離曲線はS字状となり、S字状を形成する要因をアロステリック効果といいます。

 

Bohr効果】

酸素解離曲線が右方変位することを、Bohr効果といいます。通常の酸素解離曲線は、動脈血酸素分圧が60mmHgのとき、動脈血酸素飽和度は90%となっていますが、Bohr効果が生じると動脈血酸素分圧が60mmHgでも動脈血酸素飽和度が80%70%と低くなります。この状態は、ヘモグロビンと結合する酸素の割合が少なくなるということになりますが、組織への酸素供給が増えたため、ヘモグロビンと結合している酸素が解離して組織へ供給されたとも言えます。

上記のことより、Bohr効果が生じるということは、組織が酸素を欲しがっている状況といえます。Bohr効果が生じることで、酸素が消費され二酸化炭素や解糖系の中間代謝産物である2-3DPGが増加します。その結果、pHが低下して酸性へと傾きます。

なお、酸素が必要な状況下は代謝が亢進している場合であるため、体温も上昇します。

 

Haldane効果】

酸素解離曲線が左方変位することをHaldane効果といいます。Haldane効果は上記で説明したBohr効果と正反対の反応となりますので説明は割愛させていただきます。Haldane効果については、Bohr効果に比べて名前を知らない人が多く、教科書などにもなかなかでてきません。

 

【さいごに】

呼吸療法、人工心肺、補助循環を行う上で酸素解離曲線は基礎中の基礎であります。

特に、人工心肺では低体温下や復温後など体温の変化が大きくなります。その中で呼吸管理を行わなければならないため、非常に困難となります。組織の酸素需要をコントロールする業務の1つであるため、注意が必要になります。

 

【はじめに】

V60は、フィリップス・レスピロニクス社製の人工呼吸器であり、非侵襲的陽圧換気(non-invasive positive pressure ventilationNPPV)専用であります。私の勤める病院でもV60を使用しており、ウィーニング後や呼吸状態の悪い患者さん(経鼻にて酸素投与してもSpO2の低い患者)に使用されます。

V60は、集中治療や病棟など幅広く使用されるため、臨床工学技士ではなくても基本的な知識を持っていても損はないと思います。

 

【ディスプレイ表示】

では、V60のディスプレイ表示について説明します。V60のディスプレイ表示は、上部、中部、下部に分けられており、それぞれが何を示しているのか把握しておく必要があります。

ディスプレイ上部に表示されているのは、患者データとなっています。つまり、患者さんの呼吸状態の実測値となります。項目としては、換気回数、一回換気量、吸気圧などがあります。

ディスプレイ中部に表示されているのは、換気パターンとなっています。表示される波形を見ながら、患者さんの吸気と呼吸器の送気のタイミングが合っているかなどを判断します。また、視覚的に患者さんの呼吸状態がわかりやすいので、換気波形は注意して観察しておく必要があります。

ディスプレイ下部に表示されるのは、人工呼吸器の設定になっています。換気モードや各種設定値、アラーム設定などです。V60の設定に関するものは、ディスプレイ下部で調整することになります。

 

【使用できる換気モード】

V60で使用できる換気モードはS/TPCVAVAPSCPAPの4つであり、患者さんの状態によって決定します。私が業務中に見たことがあるのはS/TPCVCPAPの3つであり、AVAPSに関しては臨床使用を見たことがありません(私個人の経験)。では、それぞれのモードについて説明していきたいと思います。

  S/T

S/Tは、Spontaneous/Timedの略称であります。Spontaneousを直訳すると「自発的や自然的」となります。つまり、人工呼吸器が患者さんの自発呼吸に同期して送気を行うモードとなります。イメージとしてはPSV(pressure support ventilation)のように、患者さんの吸気努力時に呼吸の手助けを行う感じであります。

患者さんの吸気努力が弱い場合は、V60が患者さんの吸気努力を認識しないということもあります。私の勤める病院では、V60を使用するときの大半はこの換気モードで行っております。

 

  PCV

PCVpressure control ventilationの略称であり、日本語に訳すと圧規定換気となります。患者さんの自発呼吸に合わせて一定の圧力をかけることで換気の補助を行います。また、患者さんの自発呼吸が一定の間隔なければ送気を行います。V60を使用する患者さんの中でも自発呼吸の安定しない患者さんに対して使用されるモードとなります。

 

  CPAP

CPAPcontinuous positive airway pressureの略称で、日本語に訳すと持続的気道内陽圧となります。つまり吸気・呼気関係なく、気道内に圧力を加えるという換気モードです。

 

  AVAPS

AVAPSAverage Volume Assured Pressure Supportの略称で日本語では呼ばれることは少ないのですが、日本語では平均換気量保証機能と呼ばれます。このモードは指定する換気量を維持するため、圧補助を自動的に行います。つまり、患者さんの呼吸状態にあわせてサポート圧を変化させ、設定した換気量を維持するモードです。

私自身は、このモードを使用しているのは見たことがありません。

【はじめに】

吸気呼気比逆転換気は英語にするとInverse Ratio Ventilationとなり、IRVと略されます。一般的には、呼気吸気比逆転換気とは呼ばれずIRVと呼ばれることが多いです。IRVは特殊な人工呼吸療法であるため、臨床の現場でも行っているのはほとんど見ることはないと思います。

今回は、IRVについての基礎的知識や効果について書いていきたいと思います。

 

IRVとは】

人工呼吸器の設定項目として吸気呼気比(IE)があります。通常の場合ではIE比を12に設定をして人工呼吸療法を行います。つまり、呼気時間を吸気時間の2倍設けることで、Auto-PEEPの発生などを防いでいます。

IRVの場合は、その名の通り吸気時間と呼気時間の比を逆転させます。つまり、吸気時間を呼気時間よりも長くするということです。適応となる症例については、PEEPによる酸素化が得られない場合、炭酸ガス排出困難な症例、最高気道内圧の異常上昇時などがあります。

 

IRVの効果】

吸気時間が呼気時間よりも長くなると、送気されたガスの呼出が終了しないまま、新たなガスの送気が行われるため、呼気終末の気道内圧が高くなります。このような状態をAuto-PEEPといいます。Auto-PEEPの状態では、肺胞虚脱が生じにくく常に肺胞が開いた状態になります。肺コンプライアンスの低い患者さんの場合、肺胞が虚脱してしまうと、再開通には高い圧力を必要とします。そうなると肺胞の圧損傷や、虚脱状態のまま再開通しないことがあるため、酸素化の効率がわるくなります。IRVの場合、肺胞虚脱を防ぐことでガス交換効率を高めています。

IRVを行う上で注意しなければならないのは、平均気道内圧の上昇による静脈還流量の低下です。静脈還流量が低下することで心拍出量の低下へとつながるため、IRVを行う場合は、循環動態の管理も必要があります。また、肺胞の圧損傷も考えられることから、血液ガスや白血球数などのパラメータにも注目しておく必要があります。

 

【さいごに】

IRVは一般的な人工呼吸療法ではなく特殊なものであるため、症例数が少なくなります。また、病院によっては使用経験がない場合もあると思います。文献も調べましたが数が少なく、古い文献が主になっていました。

私の勤める病院でもIRVを行っているのは、見たことがなく、気道内圧の管理や吸気呼気比の設定基準も明確なものがありません。今後、行われる際には注目して見ていきたいと思います。

では、最後まで読んでくれてありがとうございました。また更新していきたいと思います。

 

【はじめに】

圧測定と聞くと工業分野のイメージがありますが、医療の分野でも圧測定は頻繁に行われています。医療における圧測定は、動脈圧、中心静脈圧、肺動脈圧など様々な種類があります。また、測定方法も観血的や非観血的など分かれています。

今回は、圧測定について臨床工学技士の目線で書いていきたいと思います。

 

【圧力とは】

はじめに、圧力について考えていきたいと思います。圧力は「単位面積あたりにかかる力」であり、1m2の面積に加わる力が1Nの時の圧力が1Paとなります。少しややこしいですが、1m2の面積に加わる力の大きさということです。

上記のことをふまえて、生体における圧力について考えていきます。一番シンプルに考えるために、動脈圧(血圧)を例にあげて説明していきます。血圧を上記で述べたように言い換えると、血管壁に加わる力の大きさとなります。つまり、私たちが普段測定する血圧は、血液によって血管壁がおされる際にどのくらいの力が加わっているかを示す数値となります。

では、血圧はどのように規定されるのでしょうか。血圧を規定する因子は、血流量と末梢血管抵抗の2つだけであります。血圧の調整にかかわるホルモンなどは、全てこの2つの因子を変化させており、その結果として血圧が調整されているのです。血圧、血流量、末梢血管抵抗の関係を式にして示すと、

血圧=血流量×末梢血管抵抗

となります。

上記の式からもわかるように血流量と末梢血管抵抗が上昇すると血圧は上昇し、逆にこの2つの因子が低下すると血圧も低下します。

 

【圧測定の注意点】

血圧測定の方法としては、観血的な方法と非観血的な方法があります。ここでは、観血的な血圧測定における注意点を述べていきたいと思います。

観血的血圧測定に使用されるセンサとして一般的なものとして、トランスデューサ(一般的にはAラインと呼ばれています)があります。トランスデューサの測定原理を理解するためには、電気回路のブリッジ回路についての説明が必要になりますが、ここでは割愛します。

トランスデューサの付いたルートを患者さんへ接続することで血圧がモニタリングできますが、単純にルートを接続しただけでは正常な血圧測定はできません。血圧測定で一番重要な点は、高さです。一般的には、右心房と同じ高さと言われていますがもう少し正確にいうと、トランスデューサと右心房が同じ高さです。血圧測定のルートを見て、どこにトランスデューサ(センサ)があるか把握していない場合は、正確な圧測定が行えていないということになります。

高さの他に重要な点として、トランスデューサから患者さんの血管までのルートです。血液がルート内の生理食塩水をおし、それをトランスデューサで検知しているため、ルート内に異常があれば、正確な圧測定が行われているとは言えません。ルートが屈曲したり、気泡や血液が混入していると、ルート内での圧力伝搬に支障をきたし、トランスデューサまで届く圧力が変化してしまいます。

 

【さいごに】

集中治療では、血圧のみならず様々な圧力をモニタリングしている患者さんが多いと思います。圧力についての考え方と測定方法を理解することでより正確な圧測定ができると思います。

【はじめに】

人体は免疫反応により異物の除去を行うことで、病気から身を守っています。この時、免疫系により抗体が産生され抗原となる物質に作用します。健常人の場合は、抗体により抗原を弱毒化して生体の防御が行われるのですが、抗体により正常な細胞・組織を攻撃してしまうことがあります。このような病態を自己免疫疾患といいます。

自己免疫疾患は根本的な治療がないため、症状の緩和や改善を図る治療となります。治療法としては、食事療法や薬剤によるものなど様々な方法がありますが、特に症状の重い場合は血液浄化療法により、血液から症状の原因物質を除去する治療が行われます。その治療法の1つが免疫吸着療法となります。

 

【適応疾患】

免疫吸着療法の適応疾患を下記に示します。

   悪性関節リウマチ

   全身性エリテマトーデス

   重症筋無力症

   ギランバレー症候群

   慢性炎症性脱髄性多発根神経炎

   多発性硬化症

上記で述べた疾患において免疫吸着が施行されますが、疾患で使用するカラムが異なるので、注意が必要となります。

 

【治療原理】

   イムソーバPH

イムソーバPHは、リガンドにフェニルアラニンを使用しています。フェニルアラニンは疎水性であるため、疎水性の物質を疎水結合により吸着することができます。疎水性の物質としては、リウマチ因子や抗DNA抗体などがあげられます。

イムソーバPHの適応としては、悪性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、多発性硬化症があります。

 

   イムソーバTR

イムソーバTRは、リガンドにトリプトファンを使用しています。吸着原理は疎水結合であり、抗アセチルコリンレセプタ抗体、抗ガングリオシド抗体の吸着に適しています。

イムソーバTRの適応としては、重症筋無力症、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、多発性硬化症があります。

 

   セレソーブ

セレソーブはリガンドにデキストラン硫酸を用いており、静電気的相互作用により陽性荷電物質を吸着します。LDL吸着と同じ原理であるが、担体である多孔質セルロースビーズの径を小さくすることにより、抗DNA抗体を選択的に吸着できるようになっています。

セレソーブの適応としては、全身性エリテマトーデスがあります。

 

【注意点】

セレソーブの場合はLDL吸着と同様で、ブラジキニン産生による血圧低下に注意が必要となります。また、カラムにより吸着対象が異なってくるため、カラムの選択が適正に行われているかなども確認する必要があります。

 

【さいごに】

免疫吸着は他の血漿吸着療法に比べ、適応疾患が多いためそれぞれの病態を把握しなければなりません。またカラムの種類も複数あるため、間違った使用を防ぐためにカラムの管理方法も考慮しなければなりません。

【はじめに】

ビリルビンは寿命(120)となった赤血球が脾臓や肝臓で破壊されるときに生成(間接ビリルビン)されます。通常であれば、肝臓で処理(直接ビリルビン)され尿として排泄されます。肝機能が低下するとビリルビンの排泄能も低下し、血中のビリルビン濃度が上昇します。

ビリルビンは黄疸の要因物質であり、毒性を有するため高ビリルビン血症などの病態では、ビリルビン除去が必要となります。

 

【適応疾患】

ビリルビン吸着の適応疾患としては、劇症肝炎と術後肝不全があります。術後肝不全に対するビリルビン吸着の適応基準を下記に示します。

   総ビリルビンが5mg/dL以上で上昇傾向

   ペパプラスチンテスト40%以下

   昏睡Ⅱ以上

上記のうちで2項目に該当すれば、術後肝不全に対してビリルビン吸着を施行することができます。

また劇症肝炎に対しては10回、術後肝不全に対しては7回が治療回数の限度とされています。

 

【治療原理】

ビリルビン吸着に使用されるカラムとしてプラソーバ(商品名)があります。プラソーバは、陰イオン交換樹脂であるスチレン・ジ・ビニルベンゼン共重合体をリガンドとして使用しています。ビリルビンや胆汁酸は、陰性に荷電しているため静電気的相互作用により吸着除去することが可能となります。またカラムの表面を多孔質にすることにより、表面積を大きくなるためアルブミンと結合した間接ビリルビンの除去も可能としています。

 

【注意点】

ビリルビン吸着では吸着材に陰イオン交換樹脂を使用しています。従って、陰性に荷電するヘパリンも吸着対象となります。このことから、治療中に抗凝固薬としてヘパリンを使用する場合は、通常よりも量を増やして対応しなければならない。

肝不全による凝固因子が低下に対して、血漿交換(PE)のように新鮮凍結血漿(FFP)の補充などができないという点も考慮して治療を行わなければなりません。

 

【治療条件】

ビリルビン吸着を行う場合の血流量は100mL/min前後であり、分離血漿流量は血流量の20%程度で行います。治療時間は2時間前後であり、TMPの管理は50mmHg程度で行います。

プラソーバの吸着力は濃度に依存しているため、総ビリルビン濃度が低くなるにつれて吸着力も低下していきます。また、ビリルビン吸着によりカラムが黄色く着色するため、目視による吸着量の大まかな把握が可能となります。

 

【さいごに】

陰イオン交換樹脂にヘパリンが吸着されることや、肝不全による凝固因子の低下といった要因を考慮しながら治療中および治療後のACT管理を行わなければなりません。また、血漿分離器とカラムが並列に接続されるため血漿交換(PE)に比べプライミングボリュームが増えるため、血圧低下にも注意が必要となります。

【はじめに】

LDL吸着は血漿吸着療法(plasma adsorption:PA)1つであり、血液を血球成分と血漿成分に分離して、血漿成分のみをカラムに通すことでLDLを吸着除去する治療法であります。

LDL(low density lipoprotein)コレステロールはリポ蛋白の一種であり、動脈硬化の要因物質の1つであります。また、血中のLDLコレステロールが高値を示す場合は、冠動脈疾患のリスクも高くなります。

 

【適応疾患】

LDL吸着の適応疾患としては、食事の改善及び運動療法また薬物治療をおこなっても治療効果が得られない場合に行われます。さらに、保険適応となっている疾患については下記のようになっています。

   家族性高コレステロール血症

   閉塞性動脈硬化症であり、Fontaine分類以上かつ総コレステロール値が220mg/dLLDLコレステロール値が140mg/dL以上

   ネフローゼ症候群であり巣状糸球体硬化症で総コレステロール値が250mg/dL以上

 

【治療原理】

LDL吸着に使用するカラムは、多孔質セルロースビーズを担体、リガントにはデキストラン硫酸を用いております。デキストラン硫酸は、陰性荷電を多く有しており陽性荷電の多い物質を静電結合により吸着します。LDLコレステロールは、外側をリン脂質とアポ蛋白Bで覆われています。アポ蛋白Bは強い陽性であるため、LDLコレステロールは吸着されます。

 

【注意点】

   血圧低下

LDL吸着では血漿分離分離器を使用するのことや、カラムを2本並列に接続して吸着を行うため、プライミングボリュームが増加します。そのため、体外循環量が増加し血圧低下につながります。

 

   ショック

血漿が吸着材に接触することにより、ブラジキニンが産生されます。ブラジキニンは血管拡張作用があるため、血圧低下へとつながります。ここで、ACE阻害薬を服用していると症状を悪化させ、ショック状態へと陥る場合があります。そのため、LDL吸着を行う際には、ACE阻害薬の服用は禁忌とされます。

 

   出血

LDL吸着を行う場合は、凝固因子も吸着されることや、抗凝固療法により出血しやすい状態となります。

 

【治療条件】

LDL吸着を行う場合の血流量は、80mL/min前後であり、分離血漿流量は血流量の30%程度とします。上記の条件にて約3時間程度治療を行います。治療中は、TMP50mmHg程度になるようにコントロールします。また、疾患により治療期間や治療回数が異なってきます。

 

【さいごに】

閉塞性動脈硬化症の患者さんに対しては、DFPPによりLDL吸着と同等のLDL除去効果が得られます。そのため、ブラジキニン発生などによる血圧低下が気になる患者さんでは、DFPPを検討しても良いと考えます。

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